天雪の独白①
天雪にとって、二番弟子の仁は尊敬する先輩であり、兄のような存在だ。 宗主が木漏れ日のような穏やかさを持つなら、仁はその中で明るく笑う太陽のような人。まっすぐであたたかく、誰とでも分け隔てなく接する姿に、自然と心が和らぐ。 そして――一番弟…
小説 番外編
花月の独白①
花月にとって、唯一の師兄ーー林琳は、幾つになっても得体の知れない存在だった。 親元を離れて彼が入門した頃には、宗派「片燕」はすでに山雫国において重要な存在となっていた。その手によって国中に張り巡らされた陣は強固で、これまで一度たりとも怪奇…
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ゆめのはなし
仁の朝は、片燕の誰よりも早い。まだ薄暗い空の下、寝起きの空気をかき分けるように身支度を整えると、宗主である獅宇が目を覚ます時間に合わせ、静かにその寝室の前で待つ。それが、弟子としての仁の日課であり、自然と身についてしまった習慣だった。 朝…
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暮照
夕暮れの空に、群青色がじんわりと広がる。 涼やかな風が頬を撫で、林琳は静かに歩みを進めていた。山雫国の広大な陣を巡る見回り。その任を宗主から預けられてから幾度目の夕暮れだろうか。 巨大な陣が張られたこの国では、滅多なことが起こるわけではな…
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鼓動
首筋に触れる穏やかな寝息と、背中を焼くような高い体温。子供特有の熱が林琳の肌を覆い、額にはじっとりと汗が滲む。背負われた仁はすでに意識を失っている。 擦り傷だらけの頬に汗が触れ、鋭い痛みが走る。それでも手を伸ばして汗を拭うことすら許されな…
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禍の男
片燕宗主、獅宇は朱禍の知己であった。 長い間連絡も途絶えていた知己が弟子を取ったという話を耳にしたのは、本人からではなく、噂の風に乗って聞いたものだった。それも、嘘と誠が交じるような曖昧な情報だった。しかし、どうせ獅宇のことだ。お人好し…
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