①雷鳴(小説) 裏話
テーマは【天才と秀才】でした。因みにサブテーマは【答えは誰が与えるべきか】
あの世界では基本的に幸福という概念は人によって大きく差が開きます。いかんせん、戦や宗教(宗派)、領土に政治といったものが未だに存在する世界。おまけに主が残していった怪奇も「こんにちは!」している状態。死の存在が身近にある世界です。
その中で怪奇を研究している二人(天才と秀才)
世界に対して天才は答えを与えてくれる存在ではあるけれど、じゃあ、その天才には誰が答えを与えてくれるんだろう?って。それって凄く難しいことだと思うんですよね。
しかも、彼は自分を天才だと自覚した上で、それに応えなければいけない。義姉のためにも。
杏眠は天才だったけど、人柄もよくて、誰からも愛される存在。(上層部は違うけど)だから研究していても手を貸してくれる人も多かった。そして悲劇から生まれてしまったのが『宝乱石』です。まさに悲劇の産物。沢山の人が死んで、残された不思議な宝石。それは人間の手に余るものなのかもしれません。
以下、雷鳴より抜粋
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「元々、他の拠点にいた時に偶然生まれたんだ。手に負えなくなった怪奇を仕人が祓いに来て……その人は領域から出ることもなく死んでしまったけど、領域が閉じる前に心力の爆発が起きたみたいで。ぶつかり合った心力と領域の力が一部だけ閉じ込められて形を成して現世に生まれた」
石に囚われた一人の研究者は今まで以上に研究へと没頭した。それが杏眠だ。
「石には不思議な力があった」
割れた花瓶が元に戻ったり、一部の研究者の記憶が消えたり。明らかに領域の負荷による後遺症と似ていた
「でも……気が付けば初めの宝乱石は消えていて……ここにある宝乱石は俺が真似て作った偽物にすぎない」
寝る間も惜しまず、ひたすらに脳を動かした。まさに天才を証明するかのように宝乱石は形を変えて再びこの世に生まれた。
石にある力で後遺症を防ぐことが可能かもしれない。そう考えた杏眠は、幾度も実験を繰り返した。
「あの時はまだ石に希望を持っていたんだ」
かつて第三拠点にいた研究者たちは、石の存在を隠すことを決めた。「危険だ」と口を揃えて叫び、杏眠も最初の頃は全拠点で石を用いて研究を進めるべきだと反抗していた。しかし、石の持つ力を目の当たりにするうちに、彼は考えを改めざるを得なかった。その時には、すでに遅すぎたのだ。
突然、石が暴走し、怪奇を呼び寄せた。初めに命を失ったのは、第三拠点の責任者であった。そして、次は気弱な青年だった。当初は偶然の事故に思えたが、その三日後、被害は拡大し、拠点内部に怪奇が侵入した。そう、領域に飲み込まれてしまったのだ。
その場にいた研究者三名は、仕人の手により救出されたものの、後遺症に苦しみ、数日後には死亡した。後戻りする暇も与えられず、残された研究者たちは隠し部屋を作り、原石を押し込め、各拠点へと散らばった。もちろん、気味が悪いと逃げ出した者もいたが、全員が決して口に出さないと誓い、記憶の奥底に封じ込めた。全員が何かしらの後遺症を抱えており、中には第三拠点の記憶を自ら壊した者もいる。当時の第三拠点は、悪夢よりも酷い世界を目の当たりにしていたのだ。
これ以上の被害を出してはならないと、唯一残った杏眠は原石を破壊する方法を探し続けた。研究者として、己が生み出した過ちを償うべきだと思った。しかし、何をやっても原石そのものは砕け散ることはなく、原石から小さな宝乱石が分裂し、数を増やすばかりだった。原石がやっと手のひらの大きさになったのは、鵜紺が移動して来た頃である。その頃には、小さな宝乱石が山ほど生まれていた。
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造り出せちゃうってのが天才の所業。あの頃はまだ夢を持っていたから。過ちを知った時には全てーー遅かった。取り返しのつかない所まで来てしまっている。そして一人、罪を償おうとしているときに現れたのが鵜紺。秀才です。努力の塊。
以下、雷鳴より抜粋
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鵜紺が第三拠点へ異動を願い出た理由は単純で、身勝手なものだった。杏眠はその理由を知らない。どれだけ尋ねられても話したことはないのだから当然だ。
天才は己の才能に殺される――それが幼い頃、母が口酸っぱく言って聞かせた言葉だった。鵜紺の父は才能に満ち溢れた学者で、正に天才と崇められた人物だったが、ある日忽然と姿を消した。帰らぬ夫に、母は恨み、嫉み、そして僻み、次第に衰弱していった。母は天才とは人の心に興味がなく、才能に殺されるものだと語り、笑いながら最期を迎えた。鵜紺はその手を握り、看病を続けたが、母は答えを確かめる前に逝き、鵜紺もまた父と母のいない故郷を捨てた。
天才は本当に才能に殺されるのだろうか。宝乱石の話を聞いた時、確かに驚いたが、まぁ天才ならそれくらいやるだろうと潔く納得し、研究に手を貸すことにした。天才の行く末を見届けることで、自ずと答えが手に入ると信じていた。
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それでも次第に情が沸いてしまうのが彼の性格。
天才の行く末を見届けるだけだったのに、結局は全部搔っ攫っていきました。彼は天才じゃない杏眠を愛してしまったので。失ったものは多い。それでも生きていくしかない。誰かを連れて進んでいける、その強さを鵜紺は持っています。だから故郷に彼を連れて帰ったのでしょう。少し道を外れてしまったけれど……二人の再スタートです。
②最果ての霹靂(漫画) 裏話
雷鳴のスピンオフ。
隻眼になってしまった二人のお話。当初の予定はもっと暗い話になるはずだったんですけど……。劉鳴国編でやんわりと彼らの終わりにも触れているし、たまにはハッピーなお話も描いてみようと思い、日常の出来事を抜いてみました。
テーマは【甘いもの】です。
良薬は口に苦し。後遺症の進行を食い止めるために色々と手を尽くす天才と秀才。味だけは何をやっても改善せず。飴を舐めることで耐えているのですが……鵜紺は食べません。彼は後遺症の進行により味覚も失ってしまっているので。意味がない。それでも彼にとっての甘いものは飴だけじゃない。
やっとそれに気が付いた鈍感杏眠でした!
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